東京地方裁判所 昭和26年(行)46号 判決
原告 島田徳樹
被告 東京都主事 吉田浩
一、主 文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は「被告が昭和二十六年六月二十九日東京都渋谷区八幡通り一丁目十四番地の一宅地百三十九坪六合四勺(以下本件宅地と略称する)に対してなした差押処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求めると申立て、請求の原因として、
「本件土地は原告の所有に属するものであるが国道拡張の為にその使用を禁じられたまま、その換地の交付もなされて居ないものであるのに、被告は昭和二十五年九月九日原告に対し本件土地の固定資産税として七千八百四十四円を納付すべきことを命じて来たので、原告は該納付命令を不服として同年九月十日異議の申立をなし、同年十月十五日更に別に東京都知事に訴願した。右に対する決定も裁決もないに拘らず、被告は右固定資産税徴収の為と称して昭和二十六年六月二十九日本件土地につき差押をなした。
然し本件差押処分は違法なものであるからその取消を求める。
被告の答弁事実中、本件差押処分について異議の申立をして居ないことは、被告主張の通りである。」と述べ
乙第一号証の成立は認める、と述べた。
被告は請求棄却の判決を求め、
「本件土地についての固定資産税徴収の為の差押処分の取消を求める訴を提起するには、予め地方税法第三百七十三条第二項により東京都知事に対する異議の申立を経由しなければならないものであるのに、原告は右異議の申立を経ずに直接本訴を提起して居るから不適法である。」と主張し、
「原告主張事実中、被告が原告主張の如き内容の納付命令を発したとの事実は否認するが、訴外東京都渋谷区税務事務所長が原告主張の内容の納付命令を発した事実はある。原告が昭和二十五年九月十日右納付命令に対して異議の申立をなしたこと、被告がその固定資産税徴収の為に原告主張の日に原告所有の本件土地に対する差押処分行為をなしたことは認める、其の余の事実は知らない。」と答へた。(証拠省略)
三、理 由
原告が昭和二十五年九月九日本件土地の固定資産税として七千八百四十円を納付すべき旨の命令を受け、原告所有に係る本件土地が右固定資産税として昭和二十六年六月二十九日差押へられたことは当事者間に争がない。(尤も右納付命令を発した者については争があり、又右差押処分の法律上の処分者については問題があるが、この点は暫く措くとして少くとも前示の事実だけについては当事者間に争がない訳である。)而して本件土地は東京都渋谷区に所在するものであるから、地方税法第七百三十四条第一項、第三百七十三条第二項によつて、本件土地についての固定資産税徴収の為の滞納処分に対して不服のある者は東京都知事に対し該処分について異議の申立をなし得るものとされて居り、税の賦課処分、納付命令と、その徴収のための滞納処分とは別個の手続であるから滞納処分の取消を求める訴を提起するには、納付命令に対して異議の申立をなして居ても、これとは別に、該滞納処分自体について前記の異議の申立を経由するか或ひは異議の申立を経ずに直接訴を提起するとせば、原告が直接本訴を提起するについて正当の事由が存することを要するものであるところ、原告が本件差押処分自体について前記異議の申立をなして居ないことは原告の自白する処であり又異議の申立を経ずして直ちに本訴を提起するについて正当の事由があるとの事実は原告の主張しない処であり且本件全証拠を以てするもこれを認めることができないから、原告の本訴はこの点において不適法な訴と言うべきである。
よつて、原告の本訴はこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 毛利野富次郎 桑原正憲 山田尚)